マンションにおける構造【二重床・直床のメリット・デメリット】

2021.12.18

マンションで生活をするうえで快適さを左右するのが、床の構造です。
普段、床についてはあまり意識されていないかもしれません。
しかし、床はマンションにおける大切な要素を担っている部分で、生活するなかの快適さに加えて、将来的なリフォーム性にも影響してきます。
とくに注目すべきところは、マンションの床構造に採用されている二重床です。

今回は、マンションの二重床について、構造の違いやメリット、デメリットを踏まえながら解説いたします。

1.二重床構造とは?

二重床とは、マンションの床に採用されている構造の1つです。
2000年施行の住宅品質確保促進法(品確法)によって採用されるようになりました。なお、品確法施工前に建てられたマンションには、ほとんど用いられていません。

床が二重の構造になっているものを二重床といいます。
マンションの上階と下階の間には天井と床があります。その天井と床の間には20~23.5cmのタイプと、20~27cmのタイプのどちらかのコンクリートスラブが設けられています。

二重床は、このコンクリートスラブに支持するためのボルトを立て、その上に床材がくる構造です。
上階と下階の天井と床の間に隙間が生まれることにより、さまざまな利点があります。

マンションや戸建てに関係なく、人が生活する建物のなかには排水やガス、給水、給湯を効率よく行うための配管が張り巡らされています。
二重床にすることで、これらの配管を通しやすくなります。
配管は、コンクリートスラブのなかに設置すると修理などが不可能になってしまいます。そのため、このような構造になるのです。

二重床は、コンクリートスラブが一定なのでリフォームにも柔軟に対応できます。
新築マンションを購入したばかりではリフォームを考えないかもしれません。
しかしながら、将来の長い目で考えるとぜひ考慮しておきたいポイントだと思います。

また、二重床は踏み心地も異なります。
コンクリートスラブから支持ボルトを用いて持ち上げられている二重床は、遮音のためにクッション材を用いる必要がないため、踏み心地が固くしっかりとした床に仕上げられます。

また、一般的に二重床構造マンションの床には段差が少なく、バリアフリー仕様になっています。

2.「直床」(ジカユカ)とは?

二重床と比較される床の構造が直床です。
上階と下階の天井と床の間はコンクリートスラブのみ。そのすぐ上にフローリング材などの床仕上げ材が直接施工されている構造となります。

給排水、ガス、電気配線などのスペースがないため、必要なところだけ床の仕上げを上げたり、その部分のみ床スラブを下げたりして対応します。
そのため、住戸内に床段差が生じることもあり配管スペースが限定されます。

また、天井と床の間に隙間がないため、上階の足音が直に下階に伝わってしまいます。
少しでも足音を和らげるために、緩衝材やラバーが張り付けられたタイプのフローリング材などが用いられているので、踏み心地もどことなく柔らかく感じられます。

3.直床と二重床のメリット・デメリット

直床のメリット

建築における工程をいくつか省いているため、コストカットできる点です。
マンション価格が高騰する昨今、コストカットのため直床構造の採用が増えています。

コストカットと聞くと誤解を招いてしまうかもしれません。
しかし、例えばエレベーターを3基つけるところを2基に減らす、ラウンジやロビーといった共用部分を狭くして、その分の面積を専有部分に充てて価格を下げるなど、必ずしも粗悪な建物ではありません。

直床のデメリット

大掛かりなリフォームの際に配管を後から自由に動かせないため、リフォームに制約がかかってしまいます。配管するためのスペースを確保するためにコンクリートスラブが局地的に薄くなっており、配管はできますが、配置を変更することができません。将来大掛かりなリフォームを行いたくても水回りの場所などを変更できないのです。そのため、中古マンション購入後リフォームしようと考えている人への売却が難しくなってしまう可能性があります。

二重床のメリット

設備配管類のメンテナンスのしやすさです。
床の要所要所に点検口や掃除口を設けることで、設備配管類の日頃のお手入れや交換が容易に。マンション全体で使用した水が流れる排水管なので、その分劣化も早いのです。定期的な清掃はもちろんのこと、やがては大掛かりな交換工事も行う必要があります。
このような重要な配管を扱う都合上、マンションの構造はメンテナンスがしやすいに越したことはありません。

また、スプーンを落とす音やスリッパで歩くような高い音が伝わりにくくなります。
子供が飛び跳ねたり、椅子を引くような低い音については、二重床かどうかには関わらず、コンクリートスラブ自体の厚みによって遮音性能が変わります。
建物の土台のコンクリートスラブに十分な厚みを持たせた上で二重床工法を施すことにより、両方を抑えることができるようになるのです。

二重床のデメリット

直床のほうが二重床より重量床衝撃音の遮音性能が優れることがあるところです。
二重床の場合、床の上で飛び跳ねた振動が空気を通して広い範囲に伝わります。これがコンクリートスラブに伝わると、直床の場合よりも音が伝わりやすくなってしまうのです。この現象を、和太鼓などを叩いたときの振動が反対側に伝わる様子に例えて「太鼓現象」と呼びます。
しかし空気の逃げ道が確保されていれば、太鼓現象が起こらないため遮音性能がよくなります。比較的新しい二重床の工法では、床と壁との間に空気の通り道を作り太鼓現象を緩和させています。

また、二重床は土台よりも内装を高くしているため、その分だけ天井が低くなります。直床だった物件を二重床にリフォームしている場合は、天井の高さに注意しましょう。

二重床は、こんな方におすすめ

・新築マンション購入の際に将来リフォームを考えている
・購入時から売却を見据えている

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更新日 2024年09月01日
公開日 2021年12月18日

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