住宅ローン控除(減税)の制度変更。2022年以降の控除額は? 控除期間は?

2021.12.27

毎年この時期になると気になる税制改革案。先日その大筋の方針が発表となりテレビや新聞、ネットのニュースでも大きく報道されていました。

近い将来家を買いたいと考えている方にとって、最も気になったのは住宅ローン控除(減税)制度の変更ではないでしょうか。

2022年度の税制大綱で住宅ローン控除(減税)制度の有効期間が2025年12月末まで延長になったものの、控除率は1%から0.7%に引き下げ。また借入上限額は購入する家の条件により4,000万円から3,000万円にダウン。

この変更によりこれから家を購入しようといている方にどんな影響があるのか? 得なのか損なのか? 2022年度の税制大綱の内容をチェックしていきましょう。

住宅ローン控除(減税)の変更点とは

住宅ローン控除(減税)は1972年に導入された「住宅控除」から始まり、時代に合わせて幾度なく改正されてきました。

税制大綱とは日本や世界の経済状況を見つつ、翌年の税制のあり方や税制の変更をまとめた方針で、毎年秋ごろから論戦に入り12月中頃までにまとめて、発表。翌年の通常国会に提出され、制改革法案で反映されます。

12月中頃の税制大綱で発表となった税制改革案は通常国会に提出前ではありますが、ほぼ決定事項ということになります。今回の2022年度税制大綱ポイントを見ていきましょう。

・住宅ローン控除(減税)の借入上限の引き下げ

2022年度税制大綱の変更点のひとつは借入上限の引き下げ。現行の住宅ローン控除(減税)制度では4,000万円が上限でしたが、2022年以降は購入する家の条件によって3,000万円に上限額引き下げが決定。借入金の上限の変更により地価の高い都心エリアなどでは新築住宅が買いにくくなることが考えられます。

なぜ借入金額の上限を変更することになったのでしょうか。

住宅ローン控除(減税)制度は家を買った人の金利負担を軽くし、ローンを利用する人の税金を還付することで経済の活性化を狙って導入された制度。

現行の制度は年末のローン残高が最大4000万円の1%を上限に1年で最大40万円が所得税等から差し引かれて戻って来ます。減税期間は10年間なので、最大400万円が還付されるというもの。

家を購入する際、大半の人が利用する住宅ローン。その住宅ローンの金利はここ数年、低い水準を保っています。変動金利を選択すれば金利は0.289%からあり、

メガバンクでも現在の変動金利は0.5%以下となっています。金利が低ければ返済する利息が抑えられるので、今は大半の方は変動金利を選択されるでしょう。

この低水準の金利と現行の住宅ローン控除(減税)制度により住宅ローンを組んだ人が所得税の還付で得をしている、言わば「逆ざや」状態が発生。

所得税の過剰な還付を抑えたい財務省の意向で住宅ローン控除(減税)制度の見直しが叫ばれるようになりました。

では、具体的な例で見てみましょう。

・住宅ローン控除(減税)の控除率の引き下げ

これまでの現行の制度で見ていきます。金利0.4%とし、借入金4000万円を例としましょう。


4000万円×0.4%=16万円

と1年間の利息は16万円。ですが、住宅ローン控除(減税)は住宅ローン残高の1%で計算されるので、最大40万円が所得税の還付金として戻ってきます。


40万円‐16万円=24万円

ローンを組んだ人は最大で24万円得することになります。この「逆ざや」状態を解消すべく2022年度から控除率を0.7%に引き下げる方針を提示したのです。

では、住宅ローン控除が0.7%となった場合を先程の例で見てみましょう。金利0.4%とし、借入金を4000万円 利息は年間16万円。

控除額


4000万円×0.7%=28万円

28万円‐16万円=12万円

となります。

利息の金額は同じなので、28万円から利息分を差し引きすると12万円が所得税の還付金として戻ってきます。

12万円が還付金で戻って来るとしても、現行の制度は24万円が戻って来ることと比較すると還付金は半分になり、何だか損したような気分になります。

現行の制度は金利が低水準であることも手伝って、家を買ってローンを組んだ人が得する仕組みになっており、税制面での不公平感を解消すべく、改正案が出されたわけです。

・住宅ローン控除(減税)期間の延長

税制面での不公平感を払拭する必要はありますが、経済活性化のためにも住宅を購入してほしいという国土交通省の意向で、控除率を下げるつつ、住宅ローン控除(減税)期間を延長する案が出されました。

現行の制度では住宅ローン控除(減税)制度が受けられるのは10年間。ただし、消費税が8%から10%変更になったこと、この2年の新型コロナ・ウィルス蔓延の特例措置などの条件によっては控除期間が10年間のところ13年間延長になっている場合もあります。そして2022年度からは13年間に期間が延長されることが決定しています。

そうなると、所得税等の還付金は一体いくら戻って来るのか、シュミレーションしてみましょう。住宅ローン控除の上限額3,000万円とし、控除率0.7%で計算します。


3000万円×0.7%=21万円

1年間で21万円が所得控除されます。


21万円×13年間=273万円

と13年間に延長されたこと最大で273万円となりますが、現行の制度では最大10年間で最大400万円まで控除されていたことを考えると、今回の制度変更はどうしても「損」な感じがしてしまうのも事実です。

住宅ローン控除(減税)の新旧比較

2022年度の住宅ローン控除(減税)に関する変更点についてはお分かりいただけたと思います。

住宅ローンの借り入れ限度額が条件により4,000万円から3,000万円に、控除率が1%から0.7%へ縮小・変更となるにあたり、2022年度の税制改革で、住宅ローン控除の額が減る人や増える人はいるのか、すでにローンを借りている人は対象になるのか、など気になる点を解説していきます。

・住宅ローン控除(減税)額が減る人、増える人

2022年の住宅ローン控除(減税)制度の改正では、新築の認定住宅での控除の上限額が年間50万円から35万円に引き下げられます。また住宅ローン控除(減税)は基本的に所得税から控除されるもの。ですが、所得税からオーバーした分は一部住民税からも控除されます。その一部住民税の控除率も引き下げが決定となっています。

*住民税の改正


2021年 前年度課税所得×7% → 2022年 前年度課税所得×5%

住宅ローン控除額が減る人や増える人はどの年収ゾーンの人なのか。新築の認定住宅を購入し、扶養家族いない人の例で所得税と住民税を合わせた控除可能な税額で試算してみましょう。

【住宅ローン控除可能 上限額】 

年収

2021年借入した場合

2022年、23年借入した
場合

400万円

18.6万円

18.39万円

500万円

27.59万円

23.69万円

600万円

34.01万円

30.11万円

700万円

45.56万円

35万円

800万円

50万円 

35万円

900万円

50万円 

35万円

1000万円

50万円 

35万円

*控除可能な税額=所得税+住民税控除可能金額。扶養家族がいる場合やふるさと納税などしている場合など条件によって控除可能限度額は変わってきます。

上記の表を見る限り、年収400万円台の人の控除可能額は減額ではありますが、大きな差ではなく、2022年、2023年にローンを組んだとしてもそれほどの影響を受けていないことがわかります。

年収700万円を越えてくると控除額が約10万円引き下げとなり、年収800万円以上になると15万円引き下げになり、高収入になるほど控除可能額が減少し、損するように見えます。

岸田内閣が掲げる「新しい資本主義」の「成長と分配」がこういった点で示されているようにも感じられ、高収入の税の負担を重くし、中間層の世帯に分配しようという意向が垣間見えます。


・すでにローンを借りている人は対象?

すでに入居しローンの支払いが始まっている人はこれまで通りの控除率と控除期間が適用されるので、控除率1%、控除期間は原則10年間。2022年度の税制が変わってもそのままスライドされます。

ただし、特例措置期間があると前述でもお話しました。2021年内に契約を済ませたものの、新型コロナ・ウィルス蔓延などの事情で年内に入居ができなかった場合、下記のような条件であれば、住宅ローン控除(減税)の期間は原則10年間でしたが、13年間に延長となっています。


【延長の条件】

契約日: 注文住宅の場合 2021年9月末まで
     分譲・中古住宅  2021年11月末まで

入居日: 2022年12月末日まで

上記の日付以降に契約した場合は控除率0.7%、期間13年間が適用されます。

契約を2021年9月末ないし11月末までに済ませていたかが、現行の住宅ローン控除(減税)制度で恩恵を受けられるかどうかの分かれ目だったとも言えますが、長く住み続ける家は駆け込みで慌てて買えるものではありません。

控除率0.7%減少で改悪に取れる今回の改正。しかし、期間は13年間の延長となり、今のところ金利は低水準をキープしています。この低金利はしばらく続くものと予想されており、控除率が下がっても期間が延長されることや低水準の金利で逆ざや状態がすぐに解消されるとは考えにくいでしょう。

これから家の購入を考えていて2022年度からの住宅ローン控除(減税)を利用したいとなれば、金利の動向を見つつ、2023年末までに入居できるようスケジュールを組む必要があります。

2024年以降、住宅ローン控除(減税)はさらに縮小傾向になると発表となっています。今後の日本や世界の経済情勢によって変わる可能性もありますが、先日発表された税制大綱の大筋通りで行くと見ておいた方がよいでしょう。

近い将来家が欲しいと考えている人は、早めに準備し行動することがおすすめです。

住宅ローン控除(減税)の対象は

年収が高い人ほど控除額が減少することとなった2022年の税制大綱。一般的な年収の人は大打撃まではいかないものの、住宅ローン控除(減税)の縮小を見ると負担は増えそうです。

2022年以降、住宅ローン控除(減税)を受けるにあたり、対象となる世帯年収や家の形態をチェックしていきましょう。

・「所得制限」は引き下げ

2022年度の住宅ローン控除(減税)の改変により、所得制限も変更となり、世帯の合計所得金額が2,000万円以下と引き下げられると発表されました。現行の制度では世帯の合計所得金額が3,000万以下となっていた点と比較すると1,000万円の引き下げは年収の高い富裕層にとっては大きなダメージに。

先にもお話しましたが、住宅ローン控除(減税)の最大控除額もこれでまの400万円から新築の一般住宅の場合で273万円と30%下がります。所得制限の基準は引き下げられたものの、購入する家の条件によっては、借入限度額が上昇します。

借入限度額が増額となる対象住宅の条件をチェックしてみましょう。

・対象となる住宅は?

2022年度から借入限度額が増額されるのは認定住宅、ZEH水準省エネ住宅。2023年までは省エネ適合住宅も増額されています。

認定住宅とは認定長期優良住宅のことで、バリアフリー性、省エネルギー性、耐震性などの建築基準を満たしている住宅。

ZEH水準省エネ住宅のZEHは「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」を省略したもの。エネルギーを節約するだけでなく、作り出すことも可能な高性能住宅です。

上記ZEH水準省エネ住宅よりも基準は下がりますが、ある程度の省エネができる住宅が省エネ適合住宅です。

なぜ認定住宅やZEH水準省エネ住宅が優遇されるようになったのでしょうか。

近年環境問題やSDGsなどが取り沙汰されるようになり、住宅に関してもこれまでの「つくっては壊す」のスクラップ&ビルド型社会から「いいものを作って長く大切に使う」ストック活用型社会への転換を国土交通省が打ち出したことに始まります。

この方針により認定住宅やZEH水準省エネ住宅の建築に切り替え、家でも省エネできる家や増改築をかんたんにできるような家を増やしていこうということで、借入限度額を増額。2022年度の改正では優遇される形となりました。

各タイプの具体的な借入限度額を下記の表で見ていきましょう。

2024年、2025年は借入限度額が下がる点に注意が必要ですが、2022年、2023年内は家の条件によっては借入額が最大1000万円増額になります。

認定住宅やZEH水準省エネ住宅でなく、一般住宅や中古住宅の場合の借入限度額はどうなっているのかというと下記の通りです。

 

借入限度額

新築一般住宅

3,000万円

中古認定住宅

3,000万円

中古一般住宅

2,000万円

これまで新築の借入限度額は家の設備条件に関係なく一律4,000万となっていましたが、一般住宅を選択すると借入限度額は3,000万までと引き下げに。

家を購入する際は省エネ住宅や認定住宅かどうかで住宅ローン控除(減税)にも差が出る仕組みになっており、「いいもの作って長く使う」ストック活用型社会を押しながらも、新築の認定住宅を建てることを推奨しているようにも取れます。

これから購入する、あるいは建てる場合は認定住宅やZEH水準省エネ住宅なのか、確認する必要はありますが、新築の場合の借入限度額はほぼ増額と考えてよいでしょう。

また中古住宅に関しては消費税が課税されない中古住宅の場合の借入限度額は2,000万円、中古でも認定住宅や一定の省エネ住宅の条件を満たしていれば、借入限度額は3,000万円。

中古住宅の住宅ローン控除期間は10年間のままの据え置き、控除率0.7%は新築住宅と同じとなっています。

2022年度以降中古住宅を購入した場合の住宅ローン控除(減税)の最大額がこちら。

 

2022~2023年 

2024年~2025年

中古認定住宅

(ZEH・認定住宅)

210万円

(21万円×10年間)

210万円

(21万円×10年間)

中古一般住宅   

140万円

(14万円×10年間)

140万円

(14万円×10年間)

こうして見ると中古でも条件によっては、これまでの控除率1%が適用されれば最大で300万円控除されていましたが、2022年度からは最大でも210万円と減少。

ですが、2024年度から新築の一般住宅はさらに控除枠が縮小されるのに対し、中古住宅は据え置きということがおわかりいただけることでしょう、

また中古住宅はこれまで住宅ローン控除の基準として木造20年、耐火構造25年までの築年数の住宅だけに適用とされてきました。

2022年度からは新耐震基準となった昭和57年以降に建てられた家であれば、下記の証明書なしでも住宅ローン控除の対象となることになりました。

・耐震基準適合証明書
・既存性能評価書
・既存住宅売買瑕疵保険付証明書

これまでは上記の証明書のどれかを提出しないと控除の対象になりませんでしたが、証明書なしで受けられることになり、基準が一部緩和されています。この改正により築年数が古いものでも控除が受けられる住宅が増え、中古住宅の需要が増える可能性もあります。

所得制限も変更になり、世帯所得合計が3,000万円以下だったところ、2022年度からは世帯所得合計2,000万円以下へ縮小。床面積の基準もこれまでの50㎡から40㎡からと選択の幅は広がりますが、40㎡で控除が受けられるのは世帯所得合計1,000万円以下と富裕層の人にとっては中古住宅の購入でもマイナスのイメージとなっています。

選ぶ住宅の質によって借入できる金額が変わり、控除期間は延長になったものの、控除率が下がるなど、縮小されつつある住宅ローン控除。

家探しをされている方は次の住宅ローン控除(減税)の改正を意識しながら行動しましょう。

まとめ

「住宅ローン控除(減税)の制度変更。2022年以降の控除額は? 控除期間は?」では2022年度の税制改革により変わりゆく住宅ローン控除((減税))制度と控除額が増えて得をする人と損する人、対象住宅のタイプなどについて解説してきました。

今回の住宅ローン控除(減税)の制度の変更点は下記の通りです。

・控除期間が10年間から13年間へ延長
・住宅ローン控除の控除率は1%から0.7%へ引き下げ
・ローン残高の上限は条件により4000万円から3000万円に引き下げ
・住宅ローン控除の減税の対象所得が3,000万円以下から2,000万円以下に引き下げ

現行の制度から改悪になっており、特に高収入の人は負担の幅がより大きくなっています。

2022年度に変更になる住宅ローン控除(減税)はさらに2024年にはまた新たな見直しが入り、さらに控除の枠は縮小されるものと考えられます。

2022年度の制度を利用したいと考え、家の購入をご希望される場合は借入限度額が最大とされる2023年末までに整えられるよう計画をしていきましょう。




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公開日 2021年12月27日
更新日 2023年04月03日

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