建築好きは行こう!旧居留地の魅力
2024.09.19
横浜・神戸・長崎 ―― すべてに行ったことのある人は、「どこか似ているなぁ」と感じられたかもしれません。
これら3か所の共通点は、かつて世界に開かれた港があったことです。
これらの場所には、いまだに当時の異国情緒あふれる街並み、建造物が残っています。
そして、「三大中華街」と呼ばれるのもまたこの三つの街にある中華街です。
今も多くの人でにぎわう中華街には、みなさん吸い込まれていくでしょう。
しかし、筆者としては、ぜひ中華街だけでなく、「洋館」も楽しんでほしいのです!
そこで今回は、国内の旧居留地と、そこにある西洋建築の魅力についてご紹介します。
中華街で美味しいものを食べた後は、建築を堪能しに行きましょう♪
旧居留地とは
1858年、日本は5か国と修好通商条約を締結します。長く続いた鎖国の終わりです。
開港地として選ばれたのは、函館、神戸、横浜、長崎、新潟の5か所。
その際、開港地に外国人居留地を設置することが決まり、1899年に条約が廃止されるまで続きました。
居留地が設置されたのは、日本人と外国人の争いを避けることも目的の一つ。
基本的に外国人は居留地内でのみ生活することができ、区域内はほとんど治外法権が適応されていました。
居留地廃止後も、震災や戦争を潜り抜けながら、いくつかの洋館が残り、現在も県や市によって町並みの保全が図られています。
国内では横浜・神戸・長崎が有名で、この3か所には国内の「三大中華街」もあります。
開港当初中国から来る商人が多く、多くが通訳として中国人を連れてきたからです。
中華街は現在も多くの人でにぎわっています。
市民の日常生活に溶け込みながらも、訪れる人に非日常体験を提供し続けています。
山手(横浜)
横浜港が開港されたのは、1859年。
県内で居留地として先行して設置された山下居留地は多湿だったため、高台の山手は注目を集めました。
関東大震災の際には大きな被害を受け、外国人居住者の多くは山手を離れました。
しかし、その異国情緒溢れる街並みは観光地としても人気に。
近代化に伴い、横浜市内でもマンション建設等が増加し、山手にも開発の手が伸びていましたが、市民の声により町並み保存の取り組みが始まります。
現在では、明治に開校したミッションスクールをはじめ、多くの教育機関が集まっており、文教地区としても有名です。
港や市内を一望できる山手は、観光地としてだけでなく、市民にも愛される地域となっています。
公式HP:https://www.hama-midorinokyokai.or.jp/yamate-seiyoukan/
北野(神戸)
国内の港が次々と開港されるのに遅れて、神戸港は1868年に開港されました。
外国人居留地は、当時市役所付近に設置されていましたが、人口増加で住宅不足に。
そこで、政府は宇治川から生田川までは日本人との雑居を認めることとしましたが、それでも住めない人たちは山の手に居を構えるようになりました。
高台で陽当たりがよく、神戸港を一望できる北野町は大人気に。
一般的に居留地は日本人の出入りが厳しく制限されています。しかし、神戸は敷地面積が狭かったがゆえに、日本人と外国人の共生が実現しました。
この共生の文化は、神戸の特徴の一つでもあります。
同じく兵庫の「神戸旧居留地」は、当時も領事館や商館が多く、現在はオフィス街に様変わりしているため、ほとんど洋館と呼べるものが残っていません。
一方で、北野は当時から住む場所だったため、邸宅が多く、現在も30数件残っています。
神戸旧居留地は、現在兵庫を代表するウェディングフォトスポットにもなっています。
公式HP:https://www.kobeijinkan.com/
山手・大浦(長崎)
1859年、長崎は神奈川・函館とともに開港されることになります。
長崎で居留地が設置されたのは、従来から居留地であった出島や新地に加え、東山手・南山手・大浦です。
港に近いエリアには貿易関連の建物、山手には領事館や邸宅が建てられました。
雲仙温泉が近いことから、中国や香港に住む西洋人の保養所としても人気に。
現在でも、石畳の「オランダ坂」や街に点在する洋館に、当時の趣を残しています。
2001年からは、市民と行政が一体となり、毎年「長崎居留地まつり」が開催されています。
公式HP:https://nagasaki-kyoryuchi.com/
ここは見てほしい!必見の洋館
各地域の特におすすめの洋館をご紹介します。沢山あるため、泣く泣く厳選しました・・・。
ご紹介する洋館のすぐ近くに他のものもあることが多いので、お時間のある方はぜひすべてまわってみてください。
異人館街は、高台にあることがほとんどのため、散策される際は動きやすい靴を選ばれることをおすすめします!
えの木てい(横浜)
洋館の多く建ち並ぶ山手ですが、「えの木てい」は美味しいお茶とスイーツがいただけるカフェになっています。
印象的な赤と白のコントラストが美しいこの建物は、1927年に日本人建築家によって建築されました。
アメリカ人検事などに住み継がれ、約40年前にカフェの創業オーナー夫妻が移り住んだそうです。
カフェは1979年にオープンし、現在のオーナーは2代目。
緑の中に佇む英国建築はまるで絵本に出てくるおうちのようで、ドラマの撮影にも使われているそうです。
テラス席、2階には個室もあり、アフタヌーンティーなども楽しめます。
周辺にも洋館がたくさん。いずれも入館は無料です。
お散歩がてら、外観を眺めているだけでも楽しいです。
それぞれ休館日があるので、中も見学したい方は事前にチェックしてから行きましょう。
公式HP:https://www.enokitei.co.jp/
英国館(神戸)
筆者が日本で一番好きな異人館街は北野。
街に洋館が点在している他のところと違い、北野は比較的コンパクトにまとまっていて、一気にまわることができます。
また、どの洋館も内部が凝られていて、見ごたえ抜群。
北野異人館街は見学可能な施設が多く、できれば1日ですべてまわっていただきたいですが、特におすすめなのは「英国館」。
1909年に建築されたままで残っているコロニアル様式の洋館。
内部は、モダンデザインの父ウィリアム・モリスのファブリックで装飾され、17世紀から19世紀の格調高いアンティーク家具や調度品を楽しむことができます。
また、四季折々の美しさを見せてくれるイングリッシュガーデンも。
なんといっても、英国館の魅力は展示。
イギリスを代表する推理小説『シャーロックホームズ』シリーズの展示がされています。
ホームズのトレードマークである帽子とケープを着て館内をまわることができます。
イギリス好きにはたまらない空間です。
公式HP:https://kobe-ijinkan.net/md/england/
グラバー園(長崎)
長崎港を見下ろす南山手にあるグラバー園。
言わずもがな長崎を代表する観光名所となっています。
長崎市内に点在していた九つの建築物が一か所に移築され、一般公開されています。
そのうち旧グラバー邸・旧オルト邸、旧リンガー邸は、居留地時代からこの地にあり、国の重要文化財に指定されています。
中でも最も有名なのは旧グラバー邸ではないでしょうか。
この家の主であった英商人トーマス・ブレーク・グラバーは、長崎開港直後に来日。
23歳の若さでグラバー商会を設立。
幕末に武器商人として活躍し、長崎に造船の街としての礎を築きました。
伊藤博文や井上薫などのいわゆる長州五傑の渡英を手助けしたのも彼。後に彼らは日本の政治の中枢を担っていく存在となっていきます。
三菱財閥とも縁が深く、後のキリンHDの礎を築くなど、日本の近代化に大きく貢献しました。
1863年にできた旧グラバー邸は、国内に現存する木造洋風建築としては最古となっています。
当時大きな一本松の隣に建設された邸宅は、「IPPONMATSU」の愛称で愛されました。
グラバー亡き後は、息子夫妻の邸宅として使用されました。
2015年には世界遺産にも指定され、長崎を代表する遺産となっています。
また、グラバー園内にある「旧三菱第2ドックハウス」もおすすめ。
こちらは、三菱造船所の建設時に建てられた外国人乗組員用宿舎です。
2階からは長崎港を一望できるので、ぜひ上がってみてくださいね!
公式HP:https://glover-garden.jp/
まとめ
いかがでしたか。
日本にやってきた商人たちの情熱やロマンを感じられるのが、わたしが旧居留地をすきな理由です。
街を一望できる高台から、彼らはどんな思いでこの景色を眺めたのでしょうか。
彼らのまなざしに思いを馳せてみてくださいね。
公開日 2024年09月19日