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なぜマンションに木材を使ったのか?
~札幌 宮の森 episode2~

昭和の初期に秩父宮、高松宮の両殿下が相次いで来訪し、スキーを楽しまれたことから、札幌市の南西に位置する山のふもとは「宮の森」と呼ばれるようになりました。付近には1972年の札幌五輪でスキージャンプの舞台となった大倉山ジャンプ競技場があります。

2022年9月撮影

ヨーロッパではすでに始まっている

「この間、スキージャンプ大会を見てきたばかりです。ウインタースポーツのメッカが街のすぐ脇の丘の上にあるなんて、世界を見渡してもこんなに恵まれた場所はありません。その価値を最大限味わっていただきたいですね」

そう語るのは、世界的な建築家、隈研吾氏。隈氏は2022年夏に宮の森に竣工する「プロスタイル札幌 宮の森」を設計・デザイン・監修をしました。このラグジュアリー・レジデンスは、「木」の印象が全体を覆いつつ、寄り添うように集まり、地形に溶け込むようにして存在するのが特徴です。隈氏にとって新境地を拓くことになるこの集合住宅に対し、「環境に対する意識が高い人に住んでもらいたいですね」と想いを語ります。

「ヨーロッパでは、建物全体が木でできた集合住宅が出来始めています。そういう住宅に住んでいる人は、環境に対する意識が高い方が多い。日本ではまだそういう集合住宅は少ないので、『プロスタイル札幌 宮の森』がその先駆けになったらいいなと思っています。木を使ったこの建物は見た目に温かいので、そこに惹きつけられる方や価値を感じる方もすでにいるでしょう。環境の観点でこの建物を構成している要素を知っていただければ、もっとこの建物に対する理解が深まると思います」

2022年9月撮影

一例を挙げましょう。「プロスタイル札幌 宮の森」の外壁には丸太が並んでいます。小径木(しょうけいぼく)と呼ばれる、大きく育つ前の段階の細い木です。

「木は素材として気持ちがいいだけではなく、木を使うことで周辺環境の循環に役立ちます」と、隈氏は木と環境の関係を説明します。

「これ、すごく重要なことです。コンクリートや鉄は環境の循環とは無関係ですが、木は僕らの国土、日本という国の環境循環にとって非常に重要な位置を占めています。そこを意識しているから僕は木を使う。さわり心地がいいとか、見た目がいいというのはもちろんありますが、それ以上の意味が木にはあります。定期的に木を切って植えることで森林の状態を良くし、洪水を減らすことができ、花粉症を減らすことができます。そういうことも含めての『木』なのです」

「北海道産」であることに意義がある

幸運なことに、「プロスタイル札幌 宮の森」に使う間伐材は道南杉です。つまり、北海道産。

「その場所の木を使うことが二酸化炭素(CO2)吸収の観点から一番いい。木材を輸送するときに二酸化炭素を出してはいけませんから。それが理想ですが、今回のケースのように実現できるケースは非常に少ないのが実状です。北海道の木が使えたのは、とても貴重なことです。今回は、伐採した丸太の三面を切り落とし、その材を並べてパネル状にしたものをコンクリートの型枠として使用しています。以前からこの材料には興味があったのですが、なかなか使うチャンスがありませんでした。今回初めて、『プロスタイル札幌 宮の森』で実現します」

2022年9月撮影

完成した状態を示すパースは、1本1本表情の異なる道南杉が、建物に豊かな表情を与えていることを表しています。隈氏は「板にはない、厚みがあって迫力が感じられる建物になる」と、出来映えに太鼓判を押します。

通常、丸太の状態で切り出した木は、製材して薄く切りそろえ板にして使います。「プロスタイル札幌 宮の森」の場合はそうではなく、自然のままの状態で使うことに特色があります。

「ふぞろいなことに価値がある。それがこれからの美学になると思っています。20世紀は大量生産の時代だから、全部同じであることが価値でした。そのため、木材も規格化が進みました。でも実際には、自然の素材はひとつ一つ顔が違う。逆にふぞろいであることが価値なんだというのが、これからの時代です。そういうアピールもしていきたいですね」

2022年9月撮影

木と一緒に人生を豊かに過ごしてもらいたい

20世紀の建築はコンクリートと鉄で競争が行われていました。「21世紀は木の競争が始まっている」と、世界で活躍する隈氏は語ります。大昔の日本は木を使うことに長けており、リーダー的な存在だったが、現在は遅れているといいます。海外の方は日本人よりも行動するまでが早い。その遅れを取り戻し、再び世界をリードしたい、そして日本の方に世界的な流れを気が付いて欲しいというのが、隈氏の思い。だから、「木の建物を日本で作りたい」という強い思いを抱くようになったといいます。その最新事例が、「プロスタイル札幌 宮の森」です。

「木は切ったときにその命が終わるのではなく、ずっと生き続ける素材です。生き続けるから経年変化する。そういう素材は人間にとってものすごく親しみが持てるし、友だちのような感覚になれるはずです。『プロスタイル札幌 宮の森』に住まう方も、木と一緒に人生を豊かに過ごしていただきたいと思いますね」

「プロスタイル札幌 宮の森」を彩る木は、建築材料としての木ではなく、環境を守るための木でできています。しかも、親しみやすく、変化も楽しめる。世界をリードする気概と価値が込められた、新しい木の使い方が特徴です。

札幌 宮の森 EPISODE.1

隈研吾が「集合住宅」を手掛けた理由

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