• PROSTYLE
  • MIYANOMORI
  • INTERVIEW/ KENGO KUMA

隈研吾が「集合住宅」を手掛けた理由
~札幌 宮の森 episode1~

札幌の街を一望する「宮の森」の高台に、世界的な建築家の隈研吾氏が設計したラグジュアリー・レジデンス、「プロスタイル札幌 宮の森」が誕生しました。隈氏といえば新国立競技場やJR東日本「高輪ゲートウェイ」駅など、近年はとくに「木」を生かした建築が印象的。「プロスタイル札幌 宮の森」も外壁を覆う木が真っ先に目に飛び込んできます。

2022年9月撮影

コロナ禍が加速させた新しい建築スタイル

「木の技術に関して、かつての日本は世界の先端を走っていました。歴史を振り返ってみると、日本人は何千年にも渡って木のリーダーであり続けたと僕は思っています。21世紀に入って木の建築が世界中で復活してきていますが、日本はむしろ後発です。そのなかで主導的な役割を果たしていきたいと考えています」

隈氏は、木に対する関心は世界規模で高まっていると語ります。世界の最先端を歩む隈氏が手がける、最先端の木の建築がこの「プロスタイル札幌 宮の森」。宮の森に誕生するこの集合住宅は隈氏にとっても新たなる「挑戦」になるようです。

「木を使って丘のような建築を作りたいというのが、今までにない僕の挑戦です。今までは建築の材料として木を扱ってきました。今回は木の建築であると同時に“丘のような建築”としていますし新境地です。札幌市内と自然を一望に見渡す丘で、建築と地面が一体化し、建築自体が地形になるようなことをやりたいと思いました」

2022年9月撮影

「プロスタイル札幌 宮の森」の完成予想図を見ると、緑豊かな丘に、総戸数20戸を構成する建物が佇んでいるのがわかります。建物の構造は鉄筋コンクリート造一部鉄骨造ですが、外壁にあしらわれた木の印象が強く、ゆえにやさしく、温かく感じます。

丘のような建築にしたことに留まらず、周囲に溶け込むような建築としたことも、 “挑戦”の一部だと隈氏は言います。

「20世紀の建築は地面から離れる建築でした。最終的には超高層ビルに行き着きます。これからは逆です。建築がどんどん低くなり自然の中に溶けていく時代が来ると思っています。20世紀の建築と逆で、これからの建築は自然に還っていく。コロナ禍によって、超高層型の箱に閉じ込められて働いたり、住んだりすることはすごく密で不自然に感じられるようになってきました。これは体にも異変が起きることかもしれません。これからは、どう自然に還っていくかが重要なテーマになっていくでしょう。コロナ禍がその流れを加速させています。その意味で、地形に溶け込んでいく『プロスタイル札幌 宮の森』は、新しい時代のリーダーになる建築だと思います」

集合住宅のスタンダードを壊すきっかけに…

集合住宅というと大きな箱のような建築が一般的ですが、「プロスタイル札幌 宮の森」は違います。一見すると小さな箱が無秩序に散らばっているようでいて、その実、適度な均衡を保って丘の斜面に寄り添うようにまとまっています。これも、隈氏の新しい試みのひとつです。

「この建築は、集合住宅の形態としても新しくて、地形と同化しているという言い方もできるし、ひとつの村のような建築という言い方もできます。従来のマンションや集合住宅のスタンダードを壊すきっかけになると思っています」

「プロスタイル札幌 宮の森」はひとつ一つの住戸が集積することで、ひとつの大きな家のような集合住宅となっています。個々の住戸が、懐かしさを感じさせる路地のような屋外廊下で結ばれているのも特徴です。これは、「クルマを前提にしていない昔の道」をイメージしたものだと隈氏は説明します。クルマを前提にしていないということは、言い換えればヒューマンスケールです。

2022年9月撮影

室内では「要所で木をシンボリックに使っている」のがポイントだと、隈氏は見どころを教えてくれます。大開口を持つ窓のサッシは、「木サッシ」を採用しています。木は見た目に柔らかいだけでなく断熱性が高いため、「開け閉めするときに冷たい思いをしなくていい」のもポイント。「これからはどんどん木サッシの時代になっていく。その先駆けにもなるでしょう」と隈氏は説明します。

近年では大規模な公共建築のイメージが強い隈氏はそもそもなぜ、久しぶりに集合住宅を手がける気になったのでしょうか。その答えは「プロスタイル札幌 宮の森」の立地にありました。

「場所がものすごく大きいですね。僕が建築を引き受けるかどうかは、基本的には場所なんです。本当は集合住宅をもっとやりたいがやりたいと思える場所が少ない。建築によって場所を引き立てたいと思っていますし、逆に場所が良ければ建築の価値がアップします。日本には借景という言葉がありますが、宮の森の中の第一種低層地域の限られた場所は、札幌の都会から車だとすごく近いけど、場所が一際良く、その場所の価値が建築に乗り移ると感じました。再開発などで造りこまれた場所ではなく、以前からの歴史もあり、今も良い住宅地に住みたいと感じる方が増える時代に入ってきています。そう言った住宅地には、守られ残されている緑や自然が近くにあることが多く、都市化が進む世界的な流れです。コロナ禍もあり、日本でもこの世界的な価値を知っている方が増えてきています。中心地で生活しながらも車生活を送られている方が次の住む場所を考える時に特にそのような方が多いと感じています。ただし、建築家が作るものはわざとらしさが勝ってはいけないと思っています。あくまで、地形のおもしろさが勝つべきです」

土地や場所が持つ価値が建築を引き立てる。時代の最先端をいく「木」を使い、地形に溶け込んでいくヒューマンスケールのラグジュアリー・レジデンスが、「プロスタイル札幌 宮の森」です。

宮の森の丘だから生まれた

ここだけの建築

札幌 宮の森 EPISODE.2

なぜマンションに木材を使ったのか?

ご予約・お問い合わせ
フォームを開く